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【イベントレポート】日本企業のインハウスデザイナーから学ぶ。 これからの時代を生き抜くワークスタイル研究 成果発表会(働き方研究)

公開:2020年2月27日 更新:2020年2月27日

去る2月14日、富士ゼロックス 横浜みなとみらい事業所にて、「日本企業のインハウスデザイナーから学ぶ、これからの時代を生き抜くワークスタイル研究成果発表会」が開催されました。

 

当日は、大組織でクリエイティブを担うデザイン部や新規事業開発部門、イノベーションの推進に力を入れている企業の人事部、内閣府・経産省などの省庁など、次世代を拓く働き方やデザインを活用してイノベーションを生もうとしている皆様にご参集いただき、当初の想定を大幅に超える、約100名の方が一堂に会し、研究の成果を共有するとともにネットワーキングの場ともなりました。
ご来場いただきましたみなさまに改めて感謝申し上げます。

背景・目的

「未来のワークスタイルを示唆するインハウスデザイナー」

 

世界を取り巻く環境や価値観が激しく変化する中、
日本企業は今こそ働き方を見直して「企業のイノベーションを促進する」ことが必須とされています。

 

日本企業がグローバルな市場の中で産業競争力を高めるためには、
「より“創り出す”活動をどのように社内で起こしていくか?」という視点が重要です。
しかし、「イノベーションを生む働き方・生産性の高いワークスタイル」への施策やアプローチは
未来に残された課題のひとつとなっており、いまだ日本では成果が出ていないのが現状です。

 

こういった状況の中、これまで20年以上もの間、企業組織の中でイノベーションを支える部門に
伴走してきた私たちトリニティは、“インハウスデザイナー”の働き方にヒントを見出しました。

 

現在、注目される「デザイン思考」は様々な業種に適用され、大きな広がりを見せています。
インハウスデザイナーは、組織の文化や暗黙知を十分わかった上で、
彼らの行動様式ともいえる「デザイン思考」を無意識に、時には意識的に体現し、組織の中に創造性をもたらしています。

 

「組織におけるデザイン活動や思考」を棚卸して、整理・体系化。
このプロジェクトは組織自体を活性化させ、専門職だけではなく、
一般職、総合職などさまざまな「仕事」に関わる人々の働き方、
ひいては「仕事」とのかかわり方に、新たな視座やアプローチをもたらすものです。

 

トリニティは、製品やサービスのデザイン、事業創造には、
その上流である組織や企業のありかたのデザインも必要であると考えています。
人事や技術、経営など組織の壁を越えながら、未来のあり方を捉えるため、
趣旨に賛同いただいた日産自動車グローバルデザイン本部、コクヨ株式会社、
富士ゼロックス株式会社のご協力のもと、本プロジェクトは実施されました。

成果発表

 

2月14日に行われた発表会では、本年度に実施した「これからの日本企業に求められる未来の働く姿勢やマインドについて参考となるモデルについての議論」の成果が発表されました。

発表内容

  • インハウスデザイナーの特徴は、1人の中に相反する両極端な視点を持つことができること。企業人としてのしきたりや枠も理解しながらも、その先にある自らを含む生活者視点が同一線上にあり、企業の利益と相反するような視点も存在する。
  • イノベーションを起こすことを目的に仕事しているわけではなく、視点は企業の利益という壁を越え、「生活者」や「社会」のメリットに注がれている。日々の仕事の積み重ねの結果でふりかえるとイノベーションが生まれる。
  • 目の前のことを楽しむ素養が高いパフォーマンスを生むのだが、目の前の仕事に追われることも多く、楽しめていないことが課題。外圧だけではイノベーションは起きない。内にこもってアイデアを考え抜き、オタク的なマインドで取り組む。その内圧の高め方が難しい。
  • 「デザインする時間」と「デザインを通す為の時間」で後者のバランスが増えていることが課題やストレスになっている。

 

など、現状の課題をもとに、今後延ばすべき、強みとしてあがったポイントや、そのために必要な施策などについての提言が行われました。

発表の最後には、「インハウスデザイナーから学ぶ未来のワークスタイル」をまとめた小冊子「Inhouse Designers Thinking」も配られました。

 

冊子仕様
・A5サイズ
・24P
・フルカラー印刷

クロストーク

今回のレポート作成を行った日産自動車グローバルデザイン本部、コクヨ株式会社、富士ゼロックス株式会社の代表者に加え、三井不動産の「BASE Q*」光村圭一郎さま、資生堂 グローバルイノベーションセンターS/PARK**の中西裕子さまがご登壇。次世代の働き方についてクロストークをしていただきました。

・今ないものは、誰も分からないし、誰も知らない。しかし、今ないものをつくるためには(イノベーションを起こしていくためには)最初に共感してくれる人をみつけることが、まず最初の一歩だと思う。大事なのは「人」。まずは、自分がやりたいことを可視化して伝えることが重要で、そこから共感につながっていき、イノベーションへの原動力になっていく。
(三井不動産株式会社 BASE Q運営責任者 光村 圭一郎さま)

 

・新規事業においてはゴールが不明確なことは多く、新しいコトをつくること全般に、(デザインだけでなく)一緒に踏み込んでほしい。イノベーションを生む立場になるかは、自分自身の強みを構築する戦略性が必要だと思う。
(株式会社資生堂 R&D戦略部 中西 裕子さま)

 

・インハウスデザイナーの一人ひとりが自分の思いを持ってデザインしていくべきで、そのことが自立性のデザインを高めていくと思う。
(日産自動車株式会社 グローバルデザイン本部 デザインビジネスマネジメント部 杉野 元さま)

 

・あるときは強引に、あるときは寄り添いながら、違う立場、違う考えの人を同じ方向に向かわせる力を養っていきたいと感じた。
(富士ゼロックス株式会社 ヒューマンインターフェイスデザイン部 芝池 麗さま)

 

・昔ながらのインハウスデザイナーでは、絶滅してしまう。インハウスデザイナーの視座を一段上げなければいけたいと思う。世の中に価値感を問いかけられるようなモノづくりをしていきたい。
(コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部ものづくり本部シーティング開発部 品川グループ 黒尾智也さま)

 

など、様々な活発な議論が展開されました。

会場からの質問では、、、

 

  • 「インハウスデザイナーから「インハウス」をとったらどうなるのか?」「デザイナーとは何か?」
  • 「いま持っている技術、スキルを越えるような仕事をするにはどうしたら良いか?また、更にパワーアップさせていくための意見を聞きたい」

 

など、リアリティのある質問があがり、現場からの関心の高さがうかがえました。

*BASE Q
東京ミッドタウン日比谷6階ビジネス創造拠点「BASE Q」。
新たな価値創造や社会課題の解決を目指し、ベンチャー企業、NPO、大企業、クリエイター等、多様なバックグラウンドを持つ人々が交流し、多彩な領域のQuestionを発掘し、その答えを探求する空間。
https://www.baseq.jp/

**グローバルイノベーションセンターS/PARK
横浜・みなとみらいに2019年4月にオープンした、誰でも自由に訪れることができる美の複合体験施設。
「都市型オープンラボ」として国内外の最先端研究機関や異業種などから集約した多様な知見、情報、技術を融合させて最適な価値をつくることで、国や業界を超えたイノベーションを実現します。
https://spark.shiseido.co.jp/

懇親会

このイベントでは懇親会では名刺交換や情報交換が盛んに行われ、終了時間となっても終わらない熱い会となりました。

 

また、懇親会スタート時には、内閣府知的財産戦略推進事務局の下萩原さまから、日経デザインの今月号(2020年2月号)でも特集に取り上げられた「経営デザインシート」についての概要説明や思い入れなどをお話いただきました。

イベントの感想

 

・「インハウスデザイナーの事情には、まさに同感。一方で、社会価値創造の視点や、そのための企業の役割、利益に対する価値観の変化などについて、(特にある程度の規模を持つ企業は)社会に発信していかなければならないと思っている。今後インハウスデザイナーの役割は大きい。視座も高くしていくべきと痛感。」
(日野自動車株式会社 商業CASE推進部 執行職 事業企画グループ 兼 新事業企画部 兼 コーポレート戦略部 松山 耕輔さま)

 

インハウスデザイナーの話は、実はエンジニアも全く同じ。エンジニアも組織の中で戦いながら、生活者の視点でやっている。だが双方とも、組織や専門領域にとどまっていてはダメで、外に出ないと何も生まれない。外にでて違う世界と「交差」するところで何かが生まれる。今日、改めて思ったのは、自分のもつ力を増すことこそが、組織を強くするということ。イノベーションのためではなく、自分のため、好きなことのためにやることが、結果イノベーションにつながる。大切なのは、自分の姿勢や奥に潜む力を磨き上げることだと思う。
(アイシン・ソフトウェア株式会社 基盤技術開発部 先進開発グループ 主査  中村 正彦さま)

 

・インハウスデザイナーには生活者の視点でインサイトを掴むだけでなく、気持ちを掴んだうえでの社会課題の解決視点が必要。お客様の声を聴くだけであれば他にもできる人がいる。デザイナーの重要な役割のひとつは、これは美的に凄いんだと言えること、好きだからこれを作れると言える、強い信念。だから自分たちの役割ややっていること、感じている兆し等を経営陣に伝えるまでをやる必要がある。それはまだでき切れていない。何がなんでも経営に伝えることで、それが実現され、企業価値が生まれるし、次の自分の楽しみなや役割もひろがると思う。
(公益財団法人日本デザイン振興会 常務理事  加藤 公敬さま)

 

・「日本の大組織のインハウスデザイナーの現状と課題、方向性がよくわかり、とても勉強になった。私達の内閣府知的財産戦略推進事務局が進める「経営デザインシート」もそうだが、様々な場面で、デザイナーの活躍が期待されている。これまでのデザイン領域の枠を超えて、どんどんいろいろな場面や活動の場に出てきて欲しい。」
(内閣府 知的財産戦略推進事務局 参事官補佐 下萩原 勉 さま)

まとめ
各社、「いかに組織を活性化し、質的な成果を上げるか?」について真剣に取り組まれていることがリアルに感じられました。

 

実際のところ、「働き方」については長く議論がされてきましたが、「クリエイティブな働き方」についての取り組みは、重要であるにも関わらず国内ではまだまだ始まったばかりだといえます。そんな中で、昔から「“企業”という制限のある場でクリエイティブを発揮してきたインハウスデザイナー」の働き方には学ぶべきポイントが多くあります。しかし、同時に彼ら/彼女らが直面している課題もまた依然としてあるのも事実です。組織の中にありながら、個人としての目標や目的をもちポジティブな姿勢で取り組めることが重要であり、こういった課題に、個人と組織がそれぞれに諦めないことが、グローバルな市場の中で産業競争力を高めるためのデザイン経営の推進につながると感じます。

 

過去の延長線上に未来を描くことが難しい時代となり、
前例にとらわれることなく常にクリエーション、リ・クリエーションをし続ける事が必然となりました。
本取り組みが、BtoC、BtoB問わず、予測不可能な未来に向かって新しい発想や強力なチームワークが求められる企業・組織の
みなさまのご活動の一助となることを願っています。

 

トリニティはこれからも、インハウスデザイナーの支援をはじめ、
技術、人事、経営分野との融合による、企業価値そのものをデザインしていきたいと思っています。

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